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国土交通省の原状回復ガイドラインをわかりやすく解説【負担割合表付】

2026.04.25  | 更新: 2026.05.11
国土交通省の原状回復ガイドラインをわかりやすく解説【負担割合表付】

「退去時に高額な修繕費用を請求された」「どこまでが自分の負担なのかわからない」——原状回復をめぐるトラブルは、賃貸市場で毎年後を絶ちません。

こうしたトラブルを防ぐための公的な指針が「原状回復ガイドライン」です。国土交通省が公表しているこのガイドラインを正しく理解することで、入居者は不当な請求を回避でき、管理会社・オーナーは退去立会や工事発注をスムーズに進められます。

この記事では、退去立会代行・原状回復工事を3年で10,000件以上手がけてきたイニシャルエージェンシーが、ガイドラインの内容を徹底解説します。

📋 この記事でわかること

  • 原状回復ガイドラインの定義・法的位置付け・2024年再改定のポイント
  • 貸主(オーナー)負担と借主(入居者)負担の違いと判断基準
  • 部位別の負担割合表と耐用年数一覧(クロス・床・設備)
  • 原状回復費用の計算式とシミュレーション例
  • よくある退去トラブル(タバコ・ペット・カビ・フローリング)の判断基準
  • 管理会社・オーナーのための実務活用術(退去立会フロー・業者選定)

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1. 原状回復ガイドラインとは

原状回復ガイドラインとは、国土交通省が公表した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の通称です。賃貸住宅の退去時に発生する原状回復費用の負担割合について、一般的な基準を示した公的な指針です。

正式名称は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」。1998年3月に初版が公表され、2004年・2011年・2024年と3度の改訂が行われています。

原状回復の正しい定義

原状回復とは、「賃借人の居住・使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失・善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」です。

重要なのは、「借りたときの状態に完全に戻す」ことではない点です。経年劣化や普通に生活していれば避けられない汚れ・傷は、借主が負担する必要はありません。ガイドラインはこの2つを明確に区分することでトラブルを防ぐ役割を果たします。

ガイドラインの法的位置付けと民法改正(2020年)

原状回復ガイドライン自体に法的拘束力はありませんが、裁判所の判断にも広く参照されており、事実上の業界標準として機能しています。さらに、2020年4月施行の民法改正(民法第621条)により、ガイドラインの考え方が法律として明文化されました。

「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う」

出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」 / 民法第621条

この改正により、通常損耗・経年劣化が借主の原状回復義務の対象外であることが法律上も明確になりました。

2024年再改定のポイント

📌 公式資料はこちら

ガイドラインの全文・Q&A・参考資料は国土交通省の公式サイトから無料でダウンロードできます。
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について

2. 貸主負担と借主負担の基本原則

費用負担の基本原則を正しく理解することが、退去時のトラブル防止の第一歩です。ガイドラインでは費用負担を以下の3つに分類しています。

A|貸主(オーナー)負担

経年変化・通常損耗

時間の経過や普通の生活で避けられない劣化・汚れ。賃料の中に含まれる費用として整理される。

B|借主(入居者)負担

故意・過失による損耗

不注意や怠慢による汚れ・傷・損傷。善管注意義務に違反した場合も借主負担となる。

B+A|経過年数で減額

借主負担だが年数考慮

故意・過失があっても、耐用年数に応じて借主負担額を減額。長く住むほど負担は減少する。

貸主(オーナー)が負担するケース

カテゴリ 具体例
経年劣化 日焼けによる壁紙の変色・フローリングの色あせ
通常損耗 家具設置によるフローリングのへこみ・カーペットのへたり
設備の自然故障 エアコン・給湯器・照明器具の経年による故障
鍵の交換 入居者が変わるたびに行う防犯上の鍵交換
ハウスクリーニング 通常の清掃を行っていれば必要ない専門クリーニング
次入居者向けリフォーム グレードアップ目的の設備交換・クロス全面張替え

借主(入居者)が負担するケース

❌ 借主負担(代表例)
  • タバコのヤニ・臭いがしみついた壁紙・天井
  • ペットの爪による壁・床の傷
  • ペットの排泄物による染み・臭い
  • 不注意による壁の穴・窓ガラスの破損
  • 掃除不足による浴室・トイレのカビ・油汚れ
  • 換気・清掃を怠って悪化した結露カビ
  • 無断改造・多数の釘穴・エアコン取付跡
✅ 貸主負担(代表例)
  • 日照・経年による壁紙の変色・色あせ
  • 家具の重さによるフローリングのへこみ
  • エアコン・給湯器等の経年故障
  • 画鋲・ピン程度の小さな穴
  • 鍵の交換(防犯目的)
  • 次入居者向けのクロス張替え・設備更新
  • 構造上の問題による結露・カビ

⚠️ グレーゾーンの判断ポイント

「通常の使用か、不注意・過失か」「善管注意義務を果たしていたか」「気づいて放置したか否か」が争点になります。特に結露によるカビは、換気・清掃を怠ったと判断されると借主負担になるケースがあります。

3. 部位別の負担割合表と耐用年数一覧【早見表】

原状回復費用の計算には、各部位の法定耐用年数が欠かせません。国土交通省ガイドライン(再改訂版)国税庁の減価償却資産の耐用年数表を基にした早見表です。

クロス(壁紙)の耐用年数と居住年数別の負担割合

居住年数 借主負担割合(目安) 貸主負担割合(目安) 計算式
1年 約83% 約17% (6−1)÷6
2年 約67% 約33% (6−2)÷6
3年 約50% 約50% (6−3)÷6
4年 約33% 約67% (6−4)÷6
5年 約17% 約83% (6−5)÷6
6年以上 ほぼ0(残存価値1円) ほぼ100% 耐用年数超過

💡 クロスの重要ポイント

クロスの耐用年数は6年です。6年以上居住している場合、経年劣化分の借主負担はほぼゼロになります。ただし、タバコのヤニ汚れ・落書き等の故意・過失による損傷は、耐用年数を経過していても借主負担となります(損傷がなければ交換しなくてよかった部分について負担)。

床材の耐用年数と負担割合

床材の種類 耐用年数 負担の考え方
クッションフロア(CF) 6年 傷・汚れによる場合、居住年数で按分
カーペット 6年 全面・部分問わず居住年数で按分
フローリング(部分補修) 経過年数考慮なし 損傷箇所のみ㎡単位で借主が全額負担(年数減額なし)
フローリング(全面張替え) 木造22年・RC47年 建物の耐用年数で按分。長期居住ほど借主負担は大幅に減少
畳表(ゴザ部分) 5〜6年 日焼け・変色は貸主負担。汚れ・傷は借主負担で按分
畳床(下地部分) 10〜15年 通常使用での劣化は貸主負担

⚠️ フローリング部分補修は「年数減額なし」に注意

フローリングは部分補修が可能な場合、経過年数による減額がなく、損傷部分を㎡単位で借主が全額負担します。他の床材と異なる重要な点です。全面張替えが必要な場合は建物の耐用年数で按分されるため、長期居住者の負担は大幅に減少します。

設備・建具の耐用年数一覧

設備・建具の種類 耐用年数 備考
エアコン(設備一体型) 6年 建物に残す設備として処理する場合
ガスコンロ・IHクッキングヒーター 6年 ガスレンジ等も同様
照明器具(壁付・天井付) 6年 設備として残す場合
給湯器 15年 ガス・電気・エコキュートとも
ユニットバス・浴室設備 15年 浴槽・シャワーセット等
洗面台 15年 鏡・水栓含む
便器・トイレ設備 15年 ウォシュレット等の機器類も含む
金属製ブラインド 15年 アルミブラインド等
建具(ドア・サッシ) 建物と同様 木造15年・RC40〜50年が目安

4. 原状回復費用の計算方法

基本計算式

借主負担額 = 修繕工事費用 × (耐用年数 - 居住年数) ÷ 耐用年数
※ 居住年数が耐用年数を超えている場合、借主負担額は実質ゼロ(残存価値1円)となります。

計算シミュレーション例

ケース① 居住3年のクロスにタバコのヤニ汚れ

修繕費用:80,000円 / 耐用年数:6年 / 居住年数:3年

計算:80,000円 × (6−3) ÷ 6 = 40,000円が借主負担

→ 耐用年数の半分が残っているため、残存価値の分だけ借主が負担します。

ケース② 居住8年のクッションフロアに深いひっかき傷

修繕費用:50,000円 / 耐用年数:6年 / 居住年数:8年(耐用年数超過)

借主負担は残存価値1円のみ(実質ゼロ)

→ ただし故意・過失による損傷の場合、「損傷がなければ張替えの必要がなかった」という観点から費用の一部を請求されることがあります(公益財団法人不動産流通推進センターの裁判例解説参照)。

💡 退去費用の負担割合、正しく計算できていますか?

「見積書の内容が適正かわからない」「借主への説明に困っている」——ガイドラインに準拠した透明な見積書で、退去後トラブルを最小化します。

5. 特約と東京ルールについて

原状回復の特約は有効か

賃貸借契約書に「通常損耗も借主が負担する」「クリーニング費用は借主負担」といった特約が盛り込まれることがあります。このような特約が有効となるには、以下3条件をすべて満たす必要があります。

  1. 1 暴利的でないこと 借主に過大な経済的不利益を課すものでないこと
  2. 2 借主が内容を明確に認識・合意していること 口頭の説明だけでなく、内容を理解したうえで合意していること
  3. 3 契約書に明記されていること 口頭の約束だけでなく書面に明確に記載されていること

一方、以下のような特約は無効と判断されることがあります。

東京ルール(東京都賃貸住宅紛争防止条例)

東京都では2004年に「賃貸住宅紛争防止条例」(いわゆる東京ルール)を施行しました。国交省ガイドラインとほぼ同様の内容ですが、大きな特徴があります。

📌 東京ルールの特徴

宅地建物取引業者に対して、契約時に借主へ原状回復に関する説明を義務付けている点が特徴です。東京都内で契約する際は、不動産会社から説明を受ける権利があります。説明が不十分だった場合は、東京都住宅政策本部に相談できます。

6. よくある退去トラブルと判断基準

① タバコのヤニ汚れ・臭い

結論:借主負担

室内での喫煙による壁・天井・クロスへのヤニ汚れ・臭いは、通常の使用を超えた損耗として借主負担になります。消臭工事・クロス全面張替えが必要となるケースが多く、高額になりやすいトラブルです。

⚠️ 耐用年数を超えていても請求されることがある

6年以上居住していてもクロスの耐用年数を超えていても、「喫煙がなければ交換不要だった」という観点から工事費が請求されることがあります。喫煙は最も高額なトラブルになりやすいケースのひとつです。

② ペットによる傷・汚れ

結論:原則借主負担

ペット可物件であっても、引っかき傷・排泄物による染み・臭いは借主負担です。ペット可物件では「退去時はクロス全面張替え・消臭工事を借主負担とする」特約が盛り込まれていることが多く、契約時に必ず確認が必要です。

③ カビ・結露

結論:状況次第で判断が分かれる

状況 負担者 理由
換気が構造上不十分で発生したカビ 貸主負担 建物側の問題のため
換気・清掃を怠って悪化したカビ 借主負担 善管注意義務違反
気づいていたが管理会社に報告せず放置 借主負担 報告・通知義務違反

気になる点は入居中に貸主・管理会社に報告しておくことが、トラブル防止の最大の対策です。

④ 画鋲・釘穴

結論:画鋲は貸主負担、大きな穴は借主負担

⑤ フローリングの傷・へこみ

結論:原因と程度によって判断が分かれる

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「ガイドラインに基づいて正しく判定できているか不安」「借主とのトラブルを防ぎたい」——専門知識を持った担当者が退去立会から工事発注まで、すべてワンストップで代行します。

7. 管理会社・オーナーのためのガイドライン実務活用術

ここからは、退去立会・工事発注を担う管理会社・オーナー向けの実務的な活用法をご紹介します。他社記事にはない、現場最前線からの知見です。

入居前チェックシートで退去トラブルを防ぐ

退去時のトラブルの最大の原因は「入居時の状態が不明なこと」です。入居前に以下を記録・共有しておくだけで、退去時の言い争いをほぼ防げます。

退去立会でのガイドライン適用フロー(5ステップ)

1

入居前チェックシートを手元に用意する

入居時の状態と現状を比較するための基準を明確にします。

2

部位ごとにガイドラインと照合する

「通常損耗か故意・過失か」を現場で判断します。判断が難しいケースは即断せず、後日書面で通知します。

3

写真・動画で現状を記録する

入居者の同席のもとで記録することで、後日の「言った・言わない」を防ぎます。

4

見積書を借主に提示・説明する

費用の内訳とガイドラインとの対応関係を丁寧に説明します。「なぜこの費用が借主負担なのか」を説明できるかどうかがトラブル発生率を左右します。

5

工事を速やかに発注する

空室期間の最小化が次の入居者確保に直結します。立会から発注まで一気通貫で対応できる業者を活用すると効率的です。

2026年7月の資材値上げを踏まえたコスト管理

⚠️ 2026年7月 クロス資材30%値上げ予定

複数の建材メーカーが2026年7月からのクロスをはじめとする内装資材の値上げを発表しています。管理会社・オーナーの原状回復コストに直接影響するため、今から対策を検討することをおすすめします。

  1. 1 複数物件をまとめて発注する バッファを設けて値上げ前に完了できる案件を前倒しで処理する
  2. 2 ワンストップ対応業者と長期契約する 多業者への個別発注より一括発注のほうが価格交渉力が高く、コスト上昇の影響を抑えやすい
  3. 3 施工単価の最新情報を業者と共有する 年間契約で単価を固定する方法も有効

8. ガイドライン準拠の原状回復業者を選ぶポイント

選定基準①

ガイドライン準拠の見積書を出せるか

「耐用年数・居住年数・負担割合」が明記された見積書を出せる業者を選ぶ。透明な見積書は借主との退去後トラブルを防ぎます。

選定基準②

退去立会から工事まで一気通貫か

立会と工事が別々だと情報引き継ぎのミスが生じやすい。ワンストップ対応の業者で管理会社の手間とリスクを削減する。

選定基準③

対応スピードへのコミットメント

工事の遅れは空室期間の延長→家賃損失に直結する。「最短即日対応」「○日以内に施工完了」など明確な約束がある業者を。

9. よくある質問(FAQ)

Q 原状回復ガイドラインに法的拘束力はありますか?
A

ガイドライン自体に法的拘束力はありませんが、2020年の民法改正(民法第621条)により基本的な考え方(通常損耗・経年劣化は借主負担としない)が法律に明文化されました。裁判所もガイドラインを参考に判断を行っており、事実上の業界標準として機能しています。

Q 耐用年数を過ぎた設備の修繕費用は一切払わなくていいですか?
A

原則として、耐用年数経過後の損耗は借主負担がほぼゼロとなります。ただし「損傷がなければ交換・修繕が不要だった」という場合は、借主の故意・過失が認められれば費用の一部(または全部)を負担する必要があります。裁判例でも認められているケースがあるため注意が必要です。

Q 契約書に「クリーニング費用は借主負担」と書いてあります。払うべきですか?
A

原則として退去時の通常クリーニングは貸主負担ですが、契約書に明記されており入居者が内容を理解したうえで合意している場合は有効な特約として扱われることが多いです。相場を大幅に超える請求や、説明なしに合意させられた場合は、お近くの消費生活センターへご相談ください。

Q 管理会社が「全額借主負担」と言い張っています。どうすればいいですか?
A

まず国土交通省のガイドラインを提示して話し合いを試みてください。それでも解決しない場合は、①消費生活センター(各都道府県・市区町村)、②法テラス(法律相談)、③東京都内なら東京都住宅政策本部にご相談いただけます。

Q 入居時のチェックシートに署名しませんでした。退去時に不利になりますか?
A

不利になる可能性があります。入居時の状態を証明できないと、退去時の損傷が「入居前からあったものか」「居住中に生じたものか」を判断できないためです。入居後でも遅くはないので、現状を写真で記録し管理会社へ送付しておくことを強くおすすめします。

Q フローリング全面張替えを要求されました。全額負担する必要がありますか?
A

全面張替えの場合は建物の耐用年数(木造22年・RC47年)で按分計算されます。居住年数が長いほど借主負担は大幅に減少します。また損傷が一部の場合は「部分補修」が原則であり、全面張替えを要求できるのは損傷が広範囲に及ぶ場合に限られます。

Q 退去立会に立ち会う義務はありますか?
A

法的義務はありませんが、立会いに参加しないと後から損傷の有無を巡る主張に反論しにくくなります。可能であれば参加し、確認した内容をメモ・写真で記録しておきましょう。

まとめ

原状回復ガイドラインの核心は、「経年劣化・通常損耗は貸主負担、故意・過失は借主負担」という基本原則です。2020年の民法改正でこの考え方は法律にも明文化されており、借主には不当な費用負担を拒否する正当な根拠があります。

管理会社・オーナーにとってガイドラインは「退去トラブルを防ぐための共通言語」です。ガイドラインに準拠した立会・見積もり・工事発注を徹底することが、退去後の不要なトラブルと空室期間の最小化につながります。

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参考文献・出典

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