原状回復

原状回復とは?賃貸退去時に必ず知っておくべき基礎ガイド【2026年最新】

2026.04.25  | 更新: 2026.05.11
原状回復とは?賃貸退去時に必ず知っておくべき基礎ガイド【2026年最新】

賃貸住宅を退去するとき、または物件オーナーとして退去を受け入れるとき、必ずといっていいほど問題になるのが「原状回復」です。

国民生活センターへの原状回復に関する相談件数は毎年1万3,000件前後にのぼり(2024年度:13,277件)、賃貸トラブルの中でも特に多いカテゴリーです。「どこまで直す義務があるのか」「費用は誰が負担するのか」という知識の不足が主な原因です。

この記事では、施工実績10,000件超のイニシャルエージェンシーが、原状回復の正しい定義・国土交通省ガイドラインの読み方・費用相場・トラブル対処法・業者選びまで完全解説します。

📋 この記事でわかること

  • 原状回復の正確な定義と「現状回復」「原状復帰」との違い
  • 国土交通省ガイドラインの費用負担区分と計算方法
  • 工事種別・間取り別の費用相場(早見表つき)
  • 退去立会から工事完了までの流れとチェックポイント
  • 高額請求トラブルの防ぎ方と対処法
  • 管理会社・オーナーが実務で使える業者選定の基準

1. 原状回復とは何か?正しい定義をわかりやすく解説

原状回復とは、賃借人が退去する際に、自らの故意・過失・善管注意義務違反によって生じた損耗・毀損を復旧することです。

この定義は国土交通省が定めたもので、「借りた当時の状態に完全に戻すこと」ではありません。自然な経年劣化や通常の使用による消耗は、貸主(オーナー)が負担すべきとされています。

国土交通省ガイドラインによる正式定義

国土交通省は1998年(平成10年)に「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表し、2004年・2011年に改訂しました。ガイドラインの定義を正確に引用すると以下のとおりです。

「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」

出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

ポイントは2点です。

  1. 1 復旧が必要なのは「賃借人の行為が原因の損耗」のみ 画鋲・釘の穴(軽微なもの)、家具による床のへこみ(通常使用範囲)、日照による畳の変色などは貸主負担が原則です。
  2. 2 「借りた当時の新品状態に戻す」ことは求められていない 原状回復義務の範囲は「次の入居者のために新品にする」ことではなく、「借主が生じさせた損耗分を修繕する」ことに限定されます。

「現状回復」「原状復帰」との違い

似た言葉に「現状回復」と「原状復帰」がありますが、法律用語・実務用語として区別があります。

用語 意味 使われる場面
原状回復
(げんじょうかいふく)
賃貸借契約上の法的義務。故意・過失による損耗の修繕 不動産・法律
現状回復 「原状回復」の誤表記。法律上の正式用語ではない ×(誤用)
原状復帰
(げんじょうふっき)
設置した内装・設備を撤去して元に戻すこと 建設・工事業界

賃貸住宅・オフィス・店舗での違い

🏠 賃貸住宅(マンション・アパート)

国土交通省ガイドラインが適用され、経年劣化・通常損耗は原則として貸主負担。入居者に最も有利な基準です。

🏢 オフィス・事務所

ガイドラインの適用外で契約書の内容が優先。「スケルトン返し」特約が多く、工事費が高額になるケースがあります。

🍽️ 店舗・飲食店

スケルトン返しが一般的で、ガス・換気設備・造作の撤去も含まれます。坪単価20〜50万円に達する場合もあります。

2. 原状回復の費用は誰がどこまで負担するのか

原状回復のトラブルの大半は「費用の負担区分」をめぐるものです。国土交通省ガイドラインは、損耗・毀損の種類によって負担者を明確に区分しています。

借主(入居者)が負担するもの
  • タバコのヤニ・臭いによる壁紙・天井の汚損
  • ペットによる引っかき傷・尿による床・壁の汚損
  • 結露を放置したことによるカビ・シミ
  • 落書き・シール貼り付けによる壁紙の損傷
  • 不注意による床の大きな傷・へこみ
  • テレビ・棚の設置目的の大きな釘穴
  • エアコンフィルター掃除を怠った汚損
貸主(オーナー)が負担するもの
  • 日照・紫外線による畳・壁紙の変色・褪色
  • 家具・冷蔵庫を置いたことによる床のへこみ
  • テレビ・冷蔵庫の背面の黒ずみ
  • 画鋲・ピンの穴(ポスターや写真を飾る程度)
  • 適切な換気をしていた場合の結露によるシミ
  • 設備の経年劣化による故障(エアコン・給湯器)
  • 建物の構造上の問題による損耗

判断が難しいグレーゾーン事例

ケース① タバコのヤニ汚染

室内での喫煙は「通常の使用」とは認められず、クロス全体の張替え費用が借主負担になるのが一般的です。ただし、経過年数による残存価値で費用が減額されます。

ケース② エアコン設置時のビス穴

ガイドラインでは「通常の住まい方で発生しうるもの」として貸主負担とされていますが、「エアコン設置禁止」の特約がある場合は借主負担になります。

ケース③ カビ・結露

適切な換気・掃除をしていたにもかかわらず発生したカビは貸主負担。換気を怠り放置して悪化したカビは借主負担です。

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3. 国土交通省の原状回復ガイドラインを徹底解説

ガイドラインの目的と法的位置づけ

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、退去時のトラブル防止を目的として国土交通省が作成した指針です。法律そのものではありませんが、裁判所でも参考にされる実務上の基準として、不動産業界全体に浸透しています。

2020年4月には民法が改正され、原状回復に関するルールが明文化されました(民法621条)。これによってガイドラインの考え方が法律上も正式に裏付けられています。

賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。

出典:民法第621条(2020年改正後)|e-Gov法令検索

「経年劣化・通常損耗」の考え方

A|貸主負担

経年変化・通常損耗

時間の経過や通常の使用で自然に生じる劣化。修繕費用は賃料に含まれているとみなされます。

B|借主負担

故意・過失・善管注意義務違反

借主の行為が原因で生じた損耗・毀損。修繕費用は借主が負担します。

B+A|借主負担(年数考慮)

経過年数で減額計算

Bに該当するが、設備・建材の経過年数による減価を考慮して借主の負担割合を算出します。

負担割合の計算方法(残存価値)

借主が費用を負担する場合でも、設備・建材の「残存価値」に応じた分しか請求できません。壁紙クロスの耐用年数は6年とされています(国土交通省ガイドラインに基づく)。

📐 計算例:3年入居・タバコのヤニで汚損した場合

項目 計算 金額
クロス張替え費用(6畳) 1㎡あたり1,000円 × 36㎡ 36,000円
経過年数3年(耐用年数6年) 残存価値50% ÷ 2 −18,000円
借主の負担額 18,000円

※入居から6年以上経過している場合、クロスの残存価値は1円となり、借主は工賃の一部のみ負担。

2020年民法改正との関係

民法621条の改正によって「通常損耗・経年変化は借主負担ではない」ことが法律に明記されました。これにより、「通常損耗も全て借主負担」「クリーニング費用は必ず借主負担」という特約が無効とされるケースが増えています。ただし、借主が特約内容を認識した上で合意していた場合は有効と判断されることもあります。

4. 原状回復費用の相場と工事単価

工事種別・単価の目安(早見表)

2025〜2026年現在の一般的な工事単価の目安です。地域・物件状況・業者によって変動します。

工事種別 単価目安 備考
壁紙クロス張替え750〜1,500円/㎡グレードにより変動
クッションフロア(CF)張替え1,500〜3,000円/㎡下地補修費は別途
フローリング張替え(合板)2〜4万円/畳部分補修なら1〜2万円/箇所
フローリング張替え(無垢)4〜8万円/畳無垢材は単価が高め
畳の表替え4,000〜8,000円/畳裏返しは2,000〜4,000円
ハウスクリーニング(全体)1〜3万円間取り・広さによる
エアコン内部洗浄8,000〜15,000円/台
ビス穴・小さな穴の補修1,000〜3,000円/箇所
大きな穴の補修(石膏ボード)5,000〜15,000円/箇所
タバコのヤニ除去・クロス張替え通常の1.5〜2倍臭い除去工程が加わるため
ペット汚損(床・壁)3〜20万円以上尿浸透の場合は下地交換も

間取り別の費用相場

間取り 専有面積の目安 費用相場の目安
1K・1DK20〜30㎡3〜8万円
1LDK・2K30〜50㎡5〜15万円
2LDK・3K50〜70㎡8〜20万円
3LDK以上70㎡〜15〜40万円以上

※ ペット飼育・喫煙・長期入居(10年以上)の場合は上記を大幅に上回るケースがあります。

2026年の資材値上げで費用はどう変わる?

⚠️ 2026年7月以降の費用値上がりにご注意ください

石膏ボード・合板・クロスなど主要建材で10〜30%程度の値上がりが予測されています。特にフローリング張替え・石膏ボード補修・塗装工事への影響が大きく、現時点での見積もり取得・早期工事着手が費用を抑える有効策です。

5. 退去時の原状回復の流れ

退去通知〜工事完了までの5ステップ

1

退去通知(退去予定日の1〜2ヶ月前)

契約書に定められた退去予告期間に管理会社・貸主へ退去通知を行います。期間内に通知しないと家賃が発生し続けるリスクがあります。

2

退去立会の日程調整

管理会社または貸主と立会の日程を調整します。退去立会は損耗状況を双方で確認し、費用負担の合意を得る重要な場です。

3

退去立会(物件の確認)

立会当日、担当者と室内を確認。損耗箇所を記録し負担区分を確認します。事前準備が非常に重要です。

4

見積もりの確認・合意

立会後、修繕工事の見積もりが提出されます。内容・金額を確認し、納得できない場合は根拠の説明を求める権利があります。

5

工事実施・精算

合意した内容で工事が実施され、敷金との相殺・不足分の請求が行われます。敷金返還は退去後2週間〜1ヶ月程度が一般的です。

退去立会のチェックポイント

📁 入居前に準備・保管すること

  • 入居時の写真・動画(壁・床・設備の初期状態)
  • 入居時チェックリスト(管理会社作成)
  • 契約書の特約事項の内容確認

✅ 立会当日のポイント

  • 損耗箇所すべてを写真撮影する
  • 「入居前からあった傷」を書面で主張する
  • 損耗が通常損耗か故意・過失かを確認する
  • 内容確認前にその場でサインしない

📋 退去立会・見積もりについて相談したい方へ

見積もりの内容が適正かどうか判断に迷う場合、専門業者へのセカンドオピニオンが有効です。

6. 原状回復でよくあるトラブルと対処法

高額請求トラブルの事例と対処法

事例① 「全室クロス張替えを全額負担しろ」と言われた

クロスに部分的な汚損がある場合でも「汚損部分のみ」が借主負担です。入居6年以上なら残存価値が1円となり、工賃の一部のみ負担です。

→ 国交省ガイドラインに基づく計算書の提示を求める。応じない場合は消費生活センターへ相談。

事例② ハウスクリーニング費用を全額請求された

通常のクリーニング費用は、普通に生活して退去時に清掃していれば貸主負担が原則です。ただし契約書に明示の特約があり借主が認識していた場合は有効です。

→ 契約書の特約事項を確認。内容が曖昧・高額すぎる場合は交渉の余地あり。

事例③ 入居前からあった損耗分まで請求された

入居前の傷・汚れを写真で記録していなかった場合、立証が困難になります。

→ 入居時のチェックリスト・写真が有効な証拠になります。必ず入居時に残しておきましょう。

敷金が返還されないときの対処法

  1. 1 内容証明郵便で返還請求 「○○円の返還を○月○日までに行うよう求める」と書面で請求
  2. 2 消費生活センターへ相談 無料で対応可能。電話番号「188(いやや)」で最寄りのセンターへ繋がります
  3. 3 少額訴訟(60万円以下) 簡易裁判所に申し立て可能。費用は1〜2万円程度
  4. 4 弁護士・司法書士への相談 金額が大きい・悪質な場合は専門家に依頼

7. 賃貸オーナー・管理会社が知るべき原状回復の実務ポイント

入居から退去後まで適正化する3つのポイント

📋 ポイント1:入居時チェックリストの徹底

写真と書面で初期状態を記録し、借主の署名をもらうことで退去時の争いを防げます。

📄 ポイント2:契約書特約の適正化

過度に借主に不利な特約は無効になるケースがあります。弁護士と定期的に見直しを。

🤝 ポイント3:退去立会の精度向上

ガイドラインを熟知したスタッフによる立会で、是正トラブルを大幅に削減できます。

ワンストップ対応と分業:どちらが管理会社に向いているか

方式 特徴 メリット デメリット
ワンストップ型 立会・調査・施工を1社が担当 責任の所在が明確・スピード対応・窓口1本化 比較見積もりが難しい
分業型 立会会社・工事会社を別々に手配 各専門業者を活用できる 情報連携のロス・管理工数増

8. イニシャルエージェンシーの原状回復サービス

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STEP 1

🧾 立会担当

原状回復ガイドラインを深く理解したスタッフが立会。借主への説明・負担区分の整理を正確に行い、不要なトラブルを未然に防ぎます。

STEP 2

🔨 施工担当

立会時の情報を引き継ぎ、適切な工事内容・単価で施工を実施。是正のための追加立会が発生しにくい一気通貫の体制です。

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原状回復に関するよくある質問

Q 原状回復とは何ですか?
A

原状回復とは、賃借人が退去する際に、自らの故意・過失・善管注意義務違反によって生じた損耗・毀損を修繕することです。経年劣化や通常使用による消耗は含まれません。国土交通省のガイドラインおよび2020年改正民法(第621条)によって定義されています。

Q 何年住んだら原状回復の費用負担はどうなりますか?
A

入居年数が長いほど設備・建材の残存価値が減少するため、借主の負担額は下がります。壁紙クロスの耐用年数は6年のため、入居6年以上の場合はクロスの残存価値が1円となり、借主が負担するのは工賃の一部のみです。10年以上入居した場合、多くの設備・建材が残存価値ゼロになるため、大幅な費用負担は発生しにくくなります。

Q 原状回復にかかる平均費用はいくらですか?
A

通常の使用で退去した場合の費用は、1K・1DKで3〜8万円程度が目安です。喫煙・ペット飼育・長期入居など特別な損耗がある場合は大幅に増加します。費用は工事の単価・面積・残存価値によって変わるため、見積もり書で単価と面積が明示されているかを必ず確認してください。

Q 現状回復と原状回復はどちらが正しいですか?
A

法律用語・不動産用語として正しいのは「原状回復」です。「現状回復」は誤表記であり、国土交通省ガイドラインや民法でも「原状回復」と記載されています。契約書・見積書では「原状回復」が正式表記です。

Q 管理会社に依頼すると原状回復費用は高くなりますか?
A

管理会社が特定の工事業者のみと提携している場合、競争原理が働かず割高になるケースがあります。また、紹介料が工事費に上乗せされることもあります。適正価格を確認するためには、複数業者からの相見積もりが有効です。

Q 退去立会代行サービスとはどのようなものですか?
A

退去立会代行とは、オーナー・管理会社に代わって専門スタッフが退去立会に立ち会うサービスです。ガイドラインを熟知したスタッフが損耗箇所の確認・負担区分の説明・記録作成を行い、トラブルのリスクを大幅に低減できます。イニシャルエージェンシーでは退去立会代行から原状回復工事までを一貫して担当しています。

まとめ

この記事のポイント

  • 原状回復の定義:故意・過失による損耗の修繕。経年劣化・通常損耗は含まない
  • 費用負担区分:借主負担(喫煙・ペット・不注意)と貸主負担(自然劣化・通常損耗)
  • 国交省ガイドライン:耐用年数を使った残存価値計算で費用を減額できる
  • 費用相場:クロス750〜1,500円/㎡、フローリング2〜4万円/畳。2026年の値上がりに注意
  • 退去の流れ:退去通知→立会→見積もり確認→工事→精算の5ステップ
  • トラブル対処法:消費生活センター(188番)・少額訴訟の活用が有効

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参考文献・出典

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